キャプションの必要もないほどよく知られた建築だが、写真家として気付いたことがひとつあったので、それを記しておく。内部の撮影では、6X12の変則フォーマットを縦位置に使うのが収まりがよかった。縦X横、2:1である。すべてをこの変則フォーマットで撮ろうとしたほどだから、よほど異質の空間を感じとったのだと思う。たしかに、建物全体は「論理哲学論考」のように厳格なロジックと断片化され命題で貫かれている。撮影していると、「論考」に付された番号に操られるかのように、行ったり来たりしてしまう。・・・しかし、わからないのは2:1の源泉だ。・・・クリムトが描くこの家の主人「マルガレーテ・ストンボロウ=ウィトゲンシュタイン」の肖像画は、ほぼ2:1のフォーマットに収まっている。・・・2:1は、ウィトゲンシュタインにとって、「論考」の書きだしのように「あるがままである」だったのかもしれない、少なくとも視覚とは無縁なように思えた。