標準だけど魚眼、平面だけど立体。
 


2004年10月1日〜10月21日
コニカミノルタプラザ(新宿)
鈴木豊写真展「ガウディ 時空の神話」

 

 


 

挨拶文


アントニ・ガウディの空間は見る者を包み込むような空間だ。 
カサ・バトリョのメインサロンに入って渦巻き模様の天井をじっくり見上げるとき、眩暈を感じるほどの浮遊感が押し寄せてくる。再現できないといわれる技で削り出された木製のドアやサッシ、爬虫類の表皮がモチーフの壁面、植物のゼンマイのようなドアノブ、円盤状の吹きガラス、濃密なディテールに包まれ、酔わされる。
この空間感覚を写真で表現したかった。
両眼視野に相当する画角を6列6行35mmフィルム一本に収める撮影方法はガウディと格闘しているなかで完成させた。左右の画角は216度、天地の画角は144度。標準レンズを36度ずつパンさせて6フレーム撮り、24度ダウンさせて次の行に移動する。これを36フレーム繰り返す。シンプルな操作の繰り返しだが、フィルム一本を一息で撮影するには数分間息を止めるのと同じくらいの疲労感がともなう。
この手法、あるいは写真をフォトクビカと呼んだ。言葉で説明すると難しくなるが、写真を見ていただきたい。プリントの右側半分をそのままにしておいて、左側半分を球体になるように立体的に束ねてみた。おわかりいただけただろうか、フォトクビカは球体内面写像の展開写真だということを。平面的な写真をフォトクビカ(立体写真)と呼んだのはこうした理由があったからだ。
「ガウディ 時空の神話」とは「ガウディの建築において、その空間をわたしの中で流れる時間の幅でもって再構築するとき、そこに生じる神話性」といった意味だ。これも言葉だと難しくなってしまうが、皆さん一人ひとりにわたしの撮影行為を追体験してもらえれば、納得していただけることだろう。
気に入った写真で試していただきたい。まず、コマ番号1に眼をやり、凝視しながらゆっくり四つ数える。数え終わったらコマ番号2に移り、同じく凝視しながらゆっくり4つ数える。これを最後のコマ番号36まで繰り返す。つまり、一コマに3〜4秒掛けながら全36コマを順番に凝視する、全部見終わるのに約2分かかる。次ぎに、全体をもう一度眺める。同じ写真でも最初に見たものとは異なって見えるだろう。その空間に入り込んだ自分をも想像できるひともいる筈だ。
ガウディ空間の隅々まで凝視し、システマティックに撮影する、わたしの場合、この行為がガウディの神話作りへの参加だった。

 



(C) 2004 Yutaka SUZUKI, ALL RIGHTS RESERVED.