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この家に窓はない。その代わり細いスリットが開けられている。そのかず、総延長105mの壁に60本。滋賀県甲賀市、琵琶湖に注ぐ杣川の辺に先頃竣工した。設計したのは神野太陽+中村安奈が主宰するイースタン建築設計事務所だ。

細長い敷地に高さ4mの壁が50mほど続く。外観は一見するとコンクリートの「塀」にしか見えない。しかし、ランダムに設けられたスリットが内部に住居の気配を感じさせる。家にはいると予想外に明るい空間に驚く。光をより意識させられるためかもしれない。幅140mmの細いスリットだが、床から天井まで開けられているので、光は十分に入り込んでくる。また天井まで回したスリットがトップライトの効果を発揮している。長さ36mのまっすぐな廊下は、線状の光で奥行きが強調され、ドラマチックで美しい。

設計者によると窓に対する挑戦が、この住宅のコンセプトだと言う。スリットからはいる光は柔らかくも主張を含んでいる。まるでゴシック教会のステンドグラスの光か、石積みにわずかな隙間を入れた古代遺跡の光のようだ。これが大げさな表現でないことは、長い廊下の端に立ってもう一方を眺めれば、あるいは晴れた日に、西側に面した部屋に差し込む一条の光を見れば、納得してもらえると思う。いずれにしろ、スリットに窓以上の可能性を感じるのは、かれらの挑戦が成功したことの証だ。

スリットの家はガラスを多用する現代建築に別の手法があることを示したと言える。(文/鈴木豊)

初出 アクシス 2005年6月号

 

   
       
       


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